白血病の本を読もう その1-11 木崎(2009) pp.88-124 造血幹細胞移植の基礎と流れ
正確性はいっさい保証しません
急性リンパ性白血病を中心にやります
わからないところとややこしいところは飛ばします
造血幹細胞移植の基礎と流れ
- 移植した幹細胞が患者骨髄に生着すると、正常造血の回復、免疫の回復、ドナーの免疫による抗腫瘍効果が期待される
- 造血器悪性腫瘍としては、化学療法のみでは予後不良の急性白血病が同種造血幹細胞移植の適応疾患である
造血幹細胞の起源別特徴
- 骨髄移植
- 古い
- ドナーに全身麻酔が必要
- 臍帯血移植
- ドナーへの負担が生じない
- 緊急時に使用できる
- 生着までの日数が長い
- GVL効果*1が得られにくい
適応疾患
さまざま。造血器悪性腫瘍としては、化学療法のみでは予後不良の急性白血病が同種造血幹細胞移植の適応疾患である。全身放射線照射*2と大量抗がん剤投与による腫瘍細胞の根絶とともに、生着したドナーのリンパ球による、残存腫瘍細胞への攻撃(GVL効果)が、治癒をもたらす可能性がある。
ドナー検索から幹細胞採取まで
- 患者・ドナー候補のヒト白血球抗原(HLA)検査を行う
- 移植片対宿主病*3、拒絶などの免疫反応がおこるため、HLAのA B, DR, (C)座の一致したドナーを選ぶ。
- ただし1抗原不一致の場合も移植成績は良好でありドナーになりうる。
移植前処置
- 超大量の化学療法、TBI(total body irraditation: 全身放射線照射)*4などにより、難治性の造血器悪性腫瘍を根絶させる。
- 生着不全を予防するために、患者の免疫反応を完全に抑える*5
- 全身放射線照射
- 12Gy を 4~6分割で照射する。致命的な肺への毒性があり*6、遮蔽し放射線の量を減量する工夫が必要である。照射数時間後から脳浮腫による吐き気、頭痛などを訴えることがある
- シクロフォスファミド
- たぶん大量
あとなんかいろいろ
移植に伴う合併症とその対策
治療関連毒性
- 嘔吐・吐き気
- 大量抗がん剤投与・全身放射線照射
- 口内炎・胃腸炎・下痢
- 前治療による粘膜障害に感染症
- 骨髄抑制
- 通常輸血を必要とする
- 腎機能障害
- 重症化した場合は血液透析など
- 肝機能障害
- 冠静脈閉塞症。黄疸、腹水貯留、体重増加などを生じ致死的になる可能性がある(10-25%)*7
- 心機能障害
- 大量シクロフォスファミド投与により心毒性が生じる
- 肺障害
- 放射線による肺機能低下、間質性肺炎が生じる。
- 神経障害
- 内分泌障害
- 放射線による甲状腺機能低下が生じる
- 成長ホルモン分泌低下や性腺機能低下が生じる
- 脱毛・皮膚障害
- 脱毛、全身の中毒疹、手掌・足底に皮膚障害が生じやすい
GVHD
移植片対宿主病は、生着したドナー細胞由来のリンパ球が、患者の抗原を認識し、攻撃する反応である。
- 急性GVHD:(100日以内)
- 慢性GVHD:(100日以後)
急性GVHD
- 皮膚・消化管・肝臓が標的臓器
- HLA抗原の不一致、出産経験のあるドナーから男性への移植、高齢患者ほどリスクが高い
- 臍帯血移植では頻度は少ない
皮膚
血球回復時に、四肢や体幹に丘疹、手掌や足底に紅斑が出現。急激に癒合し、全身に紅斑が拡大する場合や、火傷様に水泡形成を生じる場合(Grade IV)がある
消化管
血球回復時に嘔気、心窩部痛、水様性下痢、腹痛などが生じる。高度となり、イレウス、下血などが生じる可能性がある。脱水、低アルブミン血症などが急激に進行する場合があり、高カロリー輸液による十分な輸液、カロリー補充が必要である。
肝機能障害
黄疸、総ビリルビン、胆道系酵素などの増加が生じるが、AST, ALT が増加する場合もある。
治療
予防的に投与するシクロスポリンやタクロリムスに加えて、プレドニンやメチルプレドニンなどのステロイド投与を行なう。ステロイド抵抗性の難治性GVHDの一部の症例に対してはAVD(抗胸腺細胞免疫グロブリン)の有効性も知られている。
急性GVHDの重症度 (Stage, Grade)
Stage | 皮膚 | 肝臓 | 消化管 |
- | 皮疹(%) | 総ビリルビン(mg/d) | 下痢(m/day) |
1 | ~25 | 2-3 | 500-1000または持続する嘔気 |
2 | 25-50 | 3-6 | 1000-1500 |
3 | 50~ | 6-15 | 1500~ |
4 | 全身性紅皮症 | 15~ | 高度の腹痛・腸閉塞・消化管出血 |
Grade | 皮膚 | 肝臓 | 消化管 |
- | 皮疹 | 総ビリルビン | 下痢 |
I | 1-2 | 0 | 0 |
II | 3 | or 1 | or 1 |
III | - | or 2-3 | or 2-4 |
IV | 4 | or 4 | - |
Grade III 以上は致死的となりうる。
慢性GVHD
- HLA不適合、急性GVHDの発症、18歳以上、女性ドナーから男性への移植などがリスク
- 急性GVHDとは違いすぐに致命的となる状態ではないが、患者のQoLを著しく低下させる
- 皮膚症状:扁平苔癬用皮疹・強皮症様皮疹
- 口腔症状:いろいろ
- 眼の症状:涙腺障害
- 消化器症状:嚥下障害・嚥下痛など
- 肝臓:Alp, γ-GTP, AST, ALT, TB などの胆道系の酵素の増加
- 肺病変:閉塞性細気管支炎・間質性肺炎。ステロイド抵抗性の症例では予後不良
- 血液障害:血小板減少・溶血性貧血
- 1つの臓器だけではなく、他部位の病変を同時に発症する場合が多い
- 確実な予防法は確立されていないが、先行する急性GVHDをコントロールすることが重要
- 局所的予防としては日焼けを避けるとか
感染症
- 細菌感染
- 前処置後の好中球減少時に、敗血症、肺炎などを合併し致死的になることが多い
- 移植後免疫不全状態は続き、肺炎を繰り返す場合やウイルス感染との混合感染を容易に起こす
- 真菌感染
- 移植後の好中球減少時、血球回復後もGVHDに対する強力な免疫抑制状態においてカンジダ・アスペルギルス感染症のリスクが高い
- CMV感染症
- アデノウイルス感染症
- 帯状疱疹
晩期の合併症
- 白内障
- 放射線照射による水晶体の被曝、GVHDに対する長期のステロイド投与などが原因
- 10-30%の発症が報告されている*8
- 成長障害
- 二次性発がん
- 白質脳症
- 性腺機能障害・不妊
なんか、もうやりたい放題だな。