白血病の本を読もう その1-4 木崎(2009) pp.56-65 白血病治療の実際
正確性はいっさい保証しません
急性リンパ性白血病を中心にやります
わからないところとややこしいところは飛ばします
白血病治療の実際
白血病治療の基本的な考え方
- 急性骨髄性白血病(AML) 、急性リンパ性白血病(ALL)では、白血病細胞を完全に根治すること(total cell killing) が治療の基本方針
急性白血病に対する従来の治療
a. 寛解導入療法
- ALL, AML の治療の第1目標は、化学療法によって完全寛解 (complete remission: CR) を得ることにある。
- 完全寛解とは白血病細胞が10^10個以下となり、(形態学的には)末梢血及び骨髄から白血病細胞が消失し、正常な造血が回復した状態である。
- 体内には白血病細胞が存在する状態なので治癒とは異なる。
- 完全寛解達成後に治療を中止すると100%再発する。
- ALLではプレドニゾロン(プレドニン)とビンクリスチン(オンコビン)に加えてダウノルビシンまたはドキソルビシン(アドリアシン)、及びシクロフォスファミド(エンドキサン)、L-アスパラギナーゼ(ロイナーゼ)の併用が広く用いられる。この薬剤の選択に理論的根拠はない。
- 寛解導入療法に用いられる薬剤は、アスパラギナーゼを除き、細胞のDNA/RNA合成抑制あるいは細胞分裂時の紡錘糸の機能抑制を起こす薬剤がほとんどである
- これらの薬剤は白血病細胞の増殖を特異的に抑制するわけではなく同時に正常造血も抑制する
- しかし白血病細胞と正常造血幹細胞/前駆細胞の間で化学療法に対する感受性に差があることが、比較的高確率で完全寛解が得られることの主な理由と考えられる
b. 寛解後療法
- 完全寛解後も骨髄中には〜10^10個の白血病細胞の残存(MRD)が推定される。
- 寛解導入療法と同等またはそれ以上に強力な治療を施行し、その後で非交差耐性の併用化学療法を一定期間ごとに繰り返す方法が一般的に用いられる。
- ALLでは比較的長期(2-3年)にわたって治療が行われる。
- 中枢神経系や性腺には化学療法剤は移行しにくいので、このような部位に浸潤しやすい白血病の場合にはメソトレキセートなどの薬剤を定期的に髄腔内に投与しその予防をはかる。
c. 造血幹細胞移植
- 寛解後化学療法が間歇的に化学療法を繰り返し白血病細胞の根絶を図る*1方法であるのに対し、致死的な造血障害を回避し超大量化学療法を可能とする方法が造血幹細胞移植である。
- 初回完全寛解が得られたあと化学療法を継続するか造血幹細胞移植を施行するかは、診断時の予後因子を用いて症例を層別化し、将来再発する可能性が高いと考えられる症例を対象として移植が施行されることが多い
- 特に染色体異常は最も重要な予後因子である
d. 支持療法
- 急性白血病では病態そのものによる貧血・好中球減少・血小板減少・免疫不全に加え、強力な化学療法により重篤な感染症(敗血症・肺炎)や出血(DIC・消化管出血・脳出血)が直接の死因になることが少なくない。このような合併症の予防・治療法を支持療法と呼ぶ
非特異的治療から選択的治療へ
- 急性白血病でもさまざまな分子標的薬材の有効性が検討されているが、イマニチブのように単剤で長期寛解を維持できる薬剤は開発されていない。
- フィラデルフィア染色体陽性ALLではイマニチブあるいは第二世代のイマニチブなどの分子標的薬材を従来の化学療法と併用することで有意に治癒率が向上することが明らかになっている